そんな憂鬱なこと
忘れさせてくれる
彼女の存在は
日に日に大きくなっていったんだ
あの日の休日の
昼下り
母は
両手いっぱいに買い物袋を
ぶら下げてやってきたんだ
いつもの通り
部屋にはいってくると
最初にキッチンの
冷蔵庫へと向かった
そして
冷蔵庫の中へと
買ってきたものを詰め込んだ
詰め込み終わると
ようやく
俺の顔を見た
俺は
部屋の小さな机の上に
グラスに入れたアイスティーを
出して
母にすすめた
母は俺の前に座って
グラスに口をつける
夏ほどは暑くないけれど
午後の日差しは
汗をにじませるのに
十分だ
母はタオル地の
小さなハンカチを
鞄から出すと汗を拭いた
そして
ようやく笑顔になった
「外は暑いね、
ちゃんとやってるみたいで
安心したわ」
当然だろ、と
俺はふざけて言う
母は笑った
「それだけ言えれば
大丈夫だね、生きてるか心配してた
連絡くらいしなさいよ」
俺はふてくされて
かるく返事をする
それをみて
母はちょっと呆れた
顔をする
「仕事は相変わらず
忙しいの」
その言葉に俺は
まーねと返事をした
「ハルは昔から
無理するから心配
ちゃんと寝てるの?」
やばい、話をそらそう
「大丈夫だよ、父さん元気かな」
母はその言葉で父の
話を始めた

