右肩の蝶、飛んだ。



「このネクタイは?」
「逃げない為に」
「昔とそーゆう根暗な所は変わらないのね」
「貴方こそ」

意味もないやりとり。
感情をむき出して怒鳴り合ったはずなのに、他愛もない面白みの無い会話が繰り出してくる。

「この手のまま、お好み焼きでも食べます?」
「あんた、右手だけど」
「じゃあ、食べさせて貰おうかな。昔みたいに、貴方にご飯を貰おう」

馬鹿げた話だ。
ネクタイを外せと暗に言っただけなのに。
無理にはぐらかして。馬鹿みたい。

「じゃあ、いいや。寝るね」
「このまま?」
「朝一の電車で帰る。どうせ、仕事場は私だけだし、家に帰っても誰も居ないし」
「俺が襲うとかの危機は?」
「襲いたかったらどうぞ。処女だから片手じゃ無理ですよー」