右肩の蝶、飛んだ。



「そうですね。ずっとずっと俺が貴方を守りたかった。子供の頃何も出来なかったのに今さら現れても説得力無いかもしれないけど。でも俺は――貴方を恋愛対象として求めてるんです」


直球な言葉を、声の表情もつけずに淡々と言う。
甘い言葉を吐かれたはずなのに、心に響かないのは、感情が見えない蝶矢の声や表情のせいだ。


「さっきは脅迫したりキスしたくせに」

「俺の捧げる幸せ以外、傷付くだけだから。キスは、貴方を落ちつかせたかっただけ」

信じられない。私は、今も昔も自分だけを信じている。
だから、直臣さんの不審な行動も諦めてるし、自分を誤魔化すのが精いっぱいなのでどうでも良いとさえ思う。

新しい名字、住む場所、今まで築きあげられなかた人との関わり。

それに自分を適応させるだけでも大変。