右肩の蝶、飛んだ。



「何よ、それ」

「俺だけに嫌悪感を抱けば貴方が被害に遭わないと、あの時のガキだった俺が何も出来ないちっぽけだった俺が考えた皮肉の策だったんですよ」

「……いくらでも過去は美化できるわ」


蝶矢は、私が助けてあげてたんじゃない。

ご飯を貰えなくても私があげて、私が守ってあげてたんじゃない。
自分が守ってたなんて、よくもまあ、口が回ること。


「それなのに、俺を見て怯える貴方なんて貴方じゃない」
「私は、普通の女の子として生きていたの! 普通にOLして普通に恋愛して、化粧してお洒落して美味しいモノを食べるような、普通の女の子として。普通じゃない私を思い出させる貴方の存在は私には毒でしかないってこと」

「俺は貴方に会いたかったですよ。婚約して名字まで変えてるから苛っとしてしまったけど」