右肩の蝶、飛んだ。

抱き締められて、蝶矢の胸に顔を埋めてしまった。

でも、それは、蝶矢が私の顔を見たくなくて胸に抱いて隠してしまったような、私のだっさい泣き顔から逃げようとした行為だ。

「離して! 離してってば! やだ、誰か――」

暴れて逃げようとした私を、今度は無理矢理顎を掴んで、顔を上げさせた。

カツンと床に何かが落ちる音がした。
ソレが蝶矢の眼鏡だと思ったら、こんな嘘で塗りたくった顔がよく見えないだろうと思ったら一瞬油断してしまった。


「んぅっ」

唇が、触れた。
合わさった唇をこじ開ける、温かい舌に戸惑うのも忘れる。

こんな、荒々しいキスをしそうな人には見えなかった。

知的で女性に優しそうな、まるでお姫様にしてくれそうなロマンチックな夜をくれそうに見えたのに。


キスで本性がばれてる。本当のアンタは、そんなインテリぶっても似合わない。
私と同じ、みすぼらしいボロボロの羽で舞うように落ちていく蝶だ。

どう真似して他のモノに擬態しても所詮アンタも――。