右肩の蝶、飛んだ。


「向こうの左の扉です。シャワーも良かったらどうぞ」

ソファに座り、長い脚を組み明けると、愉快そうに言う。
それさえも優雅に見えるのだから――悔しい。

脱衣所の扉を閉めて、その場にへなへなと座り込む。腰が抜けてもう歩けない。歩きたくない。立ち上がりたくなかった。


蝶矢の狂気を私が気づいたのは、分かれる最後の夜だった。
彼が私に好意を持っていたから、羽を千切ってでも閉じ込めたかったのか、私の偽善に対しての報復だったのか今となってはもう私にはあの頃の蝶矢を理解できない。
ただ、今の現実はこのランジェリーだけ。

逃げ出して店長に拾われるまで、電車の中この身体を脱ぎ棄てたくて堪らなかった。

汚いって思った。黒の下着を着せられて、クソジジイに上から下まで値踏みされて、売られてしまうようなこの身体。
汚いって。

「うっ」