ぽいっと私の足元にソレを投げつけた。
何度も何度も化粧して隠しても、蝶矢がつけた傷が今も残って消えないような気がするのに。
「わ、私が父と義母と別府へ引っ越す事になって、一緒に居られる最後の夜、だったよね?」
一番思い出したくない、あの夜のこと。
「貴方は眠っている私の頬に、コンパスの針で傷を付けようとした。いや、針の痛みで目が覚めた私の上に貴方が居た。貴方は私を傷つけて――自分のモノにしようとした」
あの日の傷がまだ頬にある気がして。ファンデーションを塗っても塗っても消えてくれない。
「今度は貴方が私の涙を飲む番だって言いたいの?」
私を、支配しようとしている。恐怖で、――心を切り刻み飛べない様にして閉じ込めようとしている。
「ただの好奇心ですよ。仕事の契約を盾にさせていただきますが」
嘲笑う。馬鹿にされてるのだと分かったけれどただ私を辱めて笑いたいだけなのだって分かるけれど――これぐらい。
足元の下着を拾ってジャケットを脱いだ。
「脱衣所はどこですか?」



