右肩の蝶、飛んだ。


蝶矢がオートロックのキーを刺しこんだマンションは、見た事もない真新しいマンション。
エントランスがホテルの様で思わず立ち止まってしまう。
高級マンションには場違いな露店の食べ物を両手にいっぱいビニールに入れぶら下げて、10階へ上がった。


「適当にテーブルに並べて下さい」


言いながら蝶矢が上着を脱いでネクタイを緩めた瞬間、背中がピリピリと緊張してしまった。
知らない男の人。
だから、こんなに落ち付かなくて怖いのかな。


緊張して手が震えながらも中へ入ると、必要最低限のもの意外は置いていないような、神経質そうな部屋で。
リモコンの位置さえ決まっていそうなテーブルに、適当に置くと袋から出して行く。
緊張して、喉から心臓が出て来てしまいそうだったから早く帰りたいのに。


「可愛いミスです、一ケタ、少なくなってるんですよ。その値段でドレスを提供出来るわけないのに、上げ足を取る様に囃し立てて――伯母は本当に性格がおかしい」

腕時計を外した蝶矢がそう溜息を吐いた。