「お、っ脅すきですか!」
「脅しに聞こえるなら、美崎さんも俺みたいに過去から抜け出せないのかな」
ふっと馬鹿にした笑いを目元に浮かべる。
やっぱり。本性はこっちだ。
大人の皮を被って変身しても、中身は蝶矢のままだ。
「俺は――貴方に捕われているよ」
持っているビールの缶が醜く歪んでいく。
「俺がいるから自分に被害はないと安心している貴方が、それでも唯一の俺の救いの手だった屈辱の日々を俺は忘れたくて堪らない」
「……」
ごめんと謝るのは違う。私も蝶矢も悪くない。悪いのは、親を選べなかったあの環境だ。
「金魚すくいだけは飼う大変さが分かるから無理かな。まずはお好み焼きでも頼んでいいですか?」
私に拒否権なんてあるはずもない。
黙って私は蝶矢の後ろへ着いていく。



