「一回だけ、父と三人で来たことがありますよね」
「ああ、うちの父ね。そうだっけ」
「はい。……欲しいモノを俺は遠慮して言えなくて、代わりに貴方が俺の視線を読みとって、かき氷を食べたいと言ってくれました」
「そうだっけ」
「そういう、健気な部分もありましたよ、美崎さんは。全部全部、嫌だったわけじゃない」
「……やっぱり恨んでるんじゃないですか」
「いいえ。嫌な記憶を塗り替えたいだけです。今から好きなだけ、昔買えなかったものを買うのでウチまで運ぶのを手伝って貰えますか?」
手伝う――。
家に行くのに本当にそれだけ?
目が見えない。
視線が顎らへんでさ迷う。
「貴方は此処から逃げた、でも俺は此処で生きていく」
「勝手に貴方が此処で生きていくと決めただけで」
「俺は今の貴方をめちゃくちゃにできるよ」



