「すいません。お電話頂きまして今日の二時に予約していました、『butterfly』の――」
何故か電車も人も多くて、タクシーを捕まえるのにも時間がかかってしまった。
二時の約束の時間に大幅に遅れてしまって、もう既に泣きそうだ。
ロビーを駆け、受付のカウンターに両手を置いて早口で言った時だった。
「お待ちしていましたよ。美崎さん」
「蝶…高山さん、すいません、時間に遅れてしまいまして」
一瞬頭が真っ白になったけれどすぐに踏ん張って、まずは謝罪から。
すると、蝶矢はその物静かな落ち着いた表情で、優しく目元を細めて笑う。
「いいえ。今日は人が多かったでしょう? 放生会(ほうじょうえ)覚えてます? 大原神社の仲秋祭。今日からソレが始まっているんですよ」
「えっ」
「うちも今日は満室で、意外と県外からも県内からも御客様が見に来られているんです。今日は女将はその接待に大忙しです」



