BARには私以外は居なかったので、ちょっと席を立って店長から離れただけで電話を取った。
「もしもし」
『あー良かった。ごめんね、休憩中だよね』
ほわんとした直臣さんのいつもの声に、私も平然を装って対応する。
「大丈夫ですよ、どうされました?」
『雛菊さんから連絡があってね、見積書に不備があったみたいで、説明した内容と見積書の差額が大きいって』
「そんな」
そんなはず、ない。私はちゃんとテーブルに出して、直臣さんの説明を聞きながら見積書も記入していたのに。
『やっぱりお金が絡むことは信用が大事だから、悪いけど今から説明しに伺ってくれたら助かるんだけど頼める?』
ボタンを掛け間違えた様な、後味の悪い何かを感じながらも、やっと決まった大口の契約だから直臣さんの気持ちも十二分に理解できる。
「はい。分かりました。今から向かいます」
私の言葉に、ピンクの紙袋を勝手にカバンの中に店長は入れると、お会計の準備をしてくれた。



