右肩の蝶、飛んだ。





クレンジングオイルでアイラインを馴染ませて落としながら、擬態を解いて行く。

鏡に映る、二重の大きな目を、死んだように濁らせて、鏡に触れたネイルが光る爪を見ながら、私は自分の頬を見る。

ファンデを何度も何度も塗っても、それは隠れない気がして。


昔だ。
小さな、一階建の戸建てに住んでいた。
近くに花屋があって小さな川が流れていた。
夜は八時には子供部屋と言う名の、六畳の畳の部屋に私と蝶矢は押し込められ、朝までトイレに行くのにさえ許されない。私はその時に、義母に見つからない様に隠していた蝶矢のご飯やお菓子など分けてあげていた。

その時の蝶矢の顔は思い出せない。


そんな中、ある夜。
寝苦しくて起きると蝶矢が私に馬乗りになって頬に触れていた。

『窓から蝶が入って来たんだ』

その蝶は、畳の上にバラバラの羽を落として無残な姿になっていた。


『蝶矢?』