右肩の蝶、飛んだ。


「あら、よく知ってるわね」
「背中に馬鹿みたいに大きな蝶のタトゥしちゃって――。あんな女の一体何が……。一体あの女、直臣さんのなんなのよ、私を採用した癖になんで福岡に来たこと無いのよ」
「貴方、支離滅裂だわ。落ち着いて、言いたいことを纏めなさい」

「直臣さんが、私が身体を許せなくなってから――時々遊んでるの」


すぐに気づいた。
知らない香水とか、夜に電話やメールが繋がらないとか、首筋の痕とか、
車の中の違和感とか。
でも――問いただす権利は私にはないし、問いだ出してもきっと別れる選択しかない。

私はそれが怖かった。

やっと手に入れた、見た目は普通の女の子として擬態しているこの生活を、壊すのが怖い。


「愛情の前に、貴方の心って乾いちゃってるのよね。からからの貴方の心に、一粒でも水を垂らしたら、貴方はソレを吸収してそれに染まっちゃうの」

店長は、直臣さんの私への思いを、たった一滴の水に例える。

でもそれはきっと間違えじゃない。