右肩の蝶、飛んだ。


「て、店長にレッスンして貰うのもありかな」
「お馬鹿」

無理だろうけど。
店長は、住むところもない私を、未成年じゃないんだからって暫く置いてくれた。それだけでなく就職先も紹介してくれたし、化粧だの服装だの女友達のように選んでくれた。
姉の様な、兄の様な、尊敬する神のような存在でもある。

「直臣は下手じゃないし、リラックスして任せればきっと気持ちいいわよ。大丈夫」

「うう。お店で一番強いお酒頂戴」
「あ、アルコールで誤魔化したら駄目よ。飲んだら起たないか起ちにくい男ばっかなんだから、事に及ぶ時は飲ませないでね」

要らない情報のような、ありがたい様な、生々しい様な。

複雑な気分を、お酒を飲んで誤魔化した。

駄目だ。直臣さん、電話遅すぎる。

「電話相手って、どうせ元女優で今現在、離婚調停中で、子供の名前で始めた子供服ブランドが好評な凛子さんでしょ」