ぴしゃりと、オカマなお姉ちゃんに言われて、オレンジジュースをストローで回す。甘い中に、ちょっぴりお酒の苦みがあることに気づいた。本当に少しだけ。
私が、義母に見つからないように何度も何度もファンデを塗るように、――夢の中の男の子のハサミから肌を守るように、囁かなお酒の味を味わう。
「店長は、忘れられない甘い一夜があるってことだよね。男の人の、忘れられない一夜ってどんな快感?」
「……」
店長は座っている私を睨みつけるように見下ろすと、グラスの中の赤ワインを一気に飲み干し、濡れた口を手で乱暴に拭く。
「私が女側だった甘い夜なら一生忘れられないわね」
「へ?」
「それより、始めて貴方と会った夜よ。あの夜、行くあてもない貴方を家にお持ち帰りしたらよ? 化粧ッ気もない、だっさいワンピースの女の子が黒の下着を身に付けているんだから驚いたわ。本当に、アンバランスで、あーゆうーギャップはちょっと好き」
それは二日酔いで起きた朝に、店長に言われた気がする。
私は、二日酔いで頭をズキズキさせながら、なんでこの人は私の下着を見たのかに付いての方が疑問だった。



