「あのねえ。はっきり言うけど26歳で処女なんて売れ残りよ。有難くもないし、今から一から仕込むなんて面倒なんだから」
「だっ だって、こ、怖いし、痛かったし」
私と直臣さんが婚約したのは、一年前の初デートの帰り道だ。
直臣さんが指輪をくれて、私の指に嵌めてくれた。
そのまま、なし崩しにホテルに入って――、服のボタンを丁寧に外してくれた。
一つ一つの愛撫が丁寧で、直臣さんの甘い香水の匂いに感覚が酔って来て――、なのに、私は濡れなかった。
指が動かされるたびに、涙がポロポロ流れて、ただただ怖かった。
目の前に直臣さんがいるのに、優しいのに、甘いのに。
私の身体は、恐怖から拒絶してしまった。
「貴方みたいに、全部押さえつけられて生きて来た子は、セックスにも一歩踏み出せない子っているのよね。親の許可が無いと新しいことを勝手にするのは悪いことだって思うの。それに加えて、貴方は変態ロリコンジジイに売られそうになったトラウマもあるし」
困ったわね、と頬に手を添えながら店長は首を傾げる。
「私が教えてあげてもいいんだけどね」



