それは、白い息を吐く寒い日だった。
てっきり高校を出て働かされると思っていた私が、服飾系の短大に強引に進学させられたのを疑問に思いつつも、相変わらず義母に逆らえない日々を送っていた時だった。
今でも、覚えている。義母に連れられて、別府のホテルで食事をした時だ。

普段からお金を掛けられず育てられていた私は、ホテルのレストランに緊張していた。

ホテルの窓から見える月が、猫の目のような半月で、海は波も静かに揺れているだけ。
ネオンが映えて綺麗な月夜に、私は義母より年上の男の人とお見合いをさせられた。いや、あれは私以外でとっくの昔に話が出来ていたんだと思う。

ねっとりと値踏みされるような視線に、身体が動かなかった。

あれはただの顔合わせで、食事の後はホテルに部屋を取っているとか、もう笑うしかない状態だった。