「出来ると思います。ポテトが映画館のポップコーン入れみたいな大きなカップに入れられて安いんですよ」
「あれはお酒の摘まみにも合うねえ」
タクシーのおじさんの言葉に直臣さんが目を輝かせた。

「じゃあ、テイクアウトして電車の中で食べようか。そこまでお願いします」
「わあっ 良いんですか!」
「今日は契約が取れた記念日でもあるからね」
「ありがとうございます。運転手さん、そこまでお願いします」
「畏まりました」

ずっと緊張していた私はなんだかホッと、心から安堵出来た。
蝶矢の事を思い出すと胸が張り裂けそうな、えぐれそうな痛みを伴うけれど、けれど、――今の擬態中の私には関係ないんだ。


『オレキ』と略していたオレンジキットは、いつも高校生ぐらいのお兄ちゃんお姉ちゃんが居る、小学生や中学生には憧れの場所だった。

其処に、今、こうして憧れの直臣さんと共に行ける。

タクシーの運転手さんが、ポテトのサイズについて説明してくれて、それに素直に頷きながら耳を傾ける直臣さん。

私はこの人を、好きになれて良かったって心から思う。


仕事に、恋に、――懸命に生きる女の子に変身している今、強くそう思う。

擬態したまま生きていくと強く決心をして。