アイラインやアイシャドウにド派手な紫を乗せて、真っ赤な唇にくるんと巻いた睫毛。それで微笑めば――きっとどんな大きな式場でも、美しく映える蝶になる。
さっきまでのんびりしていた直臣さんが、『彼女』のドレスをどんなに素敵かと力説している中、私はただただ蝶矢の顔を見ないように見ないように、――見ないように、身体自体を横に向けて、必死で直臣さんを見た。
蝶矢は、顎に手を置いて直臣さんの話に相槌を打ちながら、真剣に聞いていた。
「美崎さん、あ、胡蝶さんの方ね」
「は、はい」
「良かったら、そっちのプラン見積もりの書類見せて貰える?」
「どうぞ」
テーブルの上に置いてあった書類を、蝶矢に差し出す。
書類を見たままの、乾いた笑顔で、顔はあげられなかった。
「ありがとう」
「――!?」
するりと、書類を渡す時に、手が触れた。
蝶矢は、書類を持つ私の指先を、撫でながら受け取った。
ほんの、瞬きをするぐらいの短い間に――まるで私の回りに鱗粉を振りまいて行くかのように、羽音も立てずに近づいた。



