右肩の蝶、飛んだ。


珈琲を混ぜたり砂糖を入れたりと、話しあう前の準備で緊張していた時だ。
最初に言葉を発したのは、直臣さんだった。

「うちのアトリエはButterflyと蝶の名前だから、ドレスの名前も蝶なんです。こんな素敵な教会のある森で、蝶が舞えたら僕は幸せです」

甘く、笑う。
菩薩の様な着物の女性は、たちまちにこの笑顔に騙されてしまうに違いない。


蝶矢だけだったら、きっと私は役立たずだったけれど、直臣さんはオーナーの蝶矢よりもこの女性の方が権力があるのだと瞬時に見切ったに違いない。

少しだけ勝算が見えてきて私も肩に乗っていた緊張が軽くなった。

「まずは、現物を見てそれで決めて欲しいんです。うちのドレスは1枚1枚、丁寧に手縫いですから体系に合わせてオーダーも受け付けますし」

大きなバックからドレスを取り出して、直臣さんの援護に回る。
蝶矢の顔は見えないけれど、負けたくないって思えたから。
広げたカラードレスは、紫を基調とした黒の薔薇をあしらったビターな、艶のあるマーメイドタイプのドレス。