「お願い、伊月さん。伊月さんがいい」


遠周りでも、嘘でも何でも良い。
考えれば考える程、舞えば舞うほど、恋愛迷路。

駆け引きも、片思いも、誰かを思う気持ちも私には良く分からないの。

だから、奪って欲しかった。価値もないけど、知って欲しい私の初めてを。
それを、どうしても蝶矢に捧げられなくて――私は伊月さんに手を伸ばした。

奪ってくれるなら、キスは要らない。
火照る身体を押し付ける様に、背中に手を回して。