右肩の蝶、飛んだ。

見なければ――もっと長く蝶を繋ぎとめられる。
見なければ――居なくなっても傷付かない。
私は自分自身にも嘘を吐いた。


蝶矢が怖くても、蝶矢の夢を見るのは怖くなかったように。
店長に抱かれたらきっと、私は、石垣さんを抱いた蝶矢を許せるって思えた。

「ねえ、貴方って本当に感じなかったの?」
「そ、のはずなんだけど」

脱がされた服を床に落とされて、上を脱いだ店長を見上げたら下半身に甘い疼きが生まれた。
キャミをめくり、胸に触れただけで、小さく声が漏れた。

「私があの夜を、どうして忘れられなかったか、教えてあげようか?」

クスッと店長が笑うと、私の耳元で甘く囁いた。

「どんなに優しく触れても、どんなに奥に深く打ちつけても、どんなに気絶するまで求められても、アイツ、キスだけはしてくれなかった」
「店長?」
「店長じゃなくて、伊月って呼びなさいよ」
「い、つき……」

口の中で転がすようにそう言うと、にたっと妖しく笑った。