右肩の蝶、飛んだ。

「ご、めっ。ごめんなさいっ」
「謝らないで。胡蝶は、――辛かったんだよね。ごめん。こんな男で」
それでも直臣さんは私を責めなかった。怒らなかった。
そして、香水で紛らわすように抱こうともしなかった。
指に光る指輪を外して、直臣さんへ返した。

「仕事は、最後までちゃんとする」
「うん。頑張ろうね」

さよならも別れの言葉もくれない直臣さんは、やっぱり優しいけれどズルイ人だった。
でも、そこがいい。そこが駄目。私を支配していたのは、貴方が私を目隠しするその優しさだった。
泣きながらマンションを後にして、そのまま途方もなく希望を探した。
ワンコールで出たのは、さっき、本当にさっき別れた相手。

「……もしもし、店長?」
『何よ』

不機嫌そうな声は、ちょっと眠たそうだった。

「今、逢いたいです。今すぐ」
『・・・・・・嫌な予感しかしないけど』

それでも良いと、私は言った。

『――……』