右肩の蝶、飛んだ。


彼が後ろに乗ると、何故か私は前の助手席にエスコートされた。
なるべく目を合わせないように俯いてお辞儀しながら乗り込んだけれど、直臣さんの隣にいたかった。少しでも安心したかったな。

「それでは、出発します」


息を吸うのってどうやるんだったっけ?
私の周りの空気だけ逃げてないかな?
酸素が入って来ない頭の中は、未だ混乱中だ。
横目でも見れなくて、窓の外ばかり見てしまう。
心臓が握り潰されたように痛い。怖い。

「そんなに、俺に会いたくなかった?」


――は?

ギギギと立て付けの悪いドアの様に、私の首が運転席に向けられる。

思わず盛大に舌打ちしてしまいそうになった。

忌々しいからではない。

どっちに転ぶか分からなくなったからだ。

「久しぶりですね。義姉さん」

駄目だ。覚えてる。

――恨んでる?