始発で到着した私を空港に迎えに来てくれた直臣さんからは――誰の香水の匂いもしなかった。

それだけで私の思考は舞いあがり、そして次の瞬間急落下するんだ。

「びっくりした。伊月も来るとは思わなかったし」
「私は、連日飲み過ぎたから、内臓休暇よ、一人でスカイツリー見たり浅草行ったり、楽しむんだから」

「そうか。じゃあ、夜は皆で飲もう」
「夜は駄目。婚約が認められて日に二人で過ごさないなんて――変でしょ?」
「店長!」

大きな釘を私に刺して店長は一人、キャリーケースを引きずってタクシーに乗り込んだ。
・・・・・・まさかこれを言う為に来たんじゃないよね?
直臣さんの顔を見れば、苦笑以外の何物でもない表情を浮かべていた。

「ま、いいか。おいで。社長が待ってる」
「しゃ、社長って、じゃあ、本社!?」

朝、シャワーは浴びたし一番良いスーツは着ているものの、本社に行くには化粧直しがしたい。

「ううん。今日はオフだよ。俺のマンションん居る」
「――俺のマンション?」

それ、初耳なんですが。