ポテトを食べていた私の唇を蝶矢は愛しげに見つめてくる。
捕獲するつもりのような、目。
私が蝶だと言いたいならば、貴方は捕獲できるような大型の何かになったつもりなのか。
「あの直臣って人に、胡蝶は自分を出せないでしょ? 本当は絶対もっと雑で短気で口が悪くて可愛いんだよ、胡蝶は」
「アンタ、私のナニを知ってるの。過ごした時間より、会っていない時間の方が長いんだからね。――多分」
「同じぐらいだよ。胡蝶は普通のそこらへんにいる女の子だよ。俺が狂ってただけ。力が無かったあの時の事は、反省してるけど、もうお互い大人だしさ」
「はっ。酷いよね。そこらへんにいる女の子って」
「でも、俺には胡蝶は一人だけだよ」
甘い吐息のように、夜の暗闇に浮かぶ白い息の様に。
凍りつくような息は、私の目の前で消えて行く。
無意識と言うのだろうか、いや反射的と言うのだろうか。
蝶矢のその馬鹿みたいに歯の浮く台詞に、私は思い切り頬を打っていた。
頬を打つ音が、吐き出した白い息よりもきっと夜空に大きく浮かんだ。
「今さらアンタが何を言おうが私の救いにはならないの」
「でも、俺は救われてる。もっと見せてよ、本音」
「一時間じゃ足らないわよ。馬鹿」
理屈や言い訳、負け犬根性、劣等感。
全てが私を守っていた安い鎧だとしたら、きっと全部蝶矢の狂気に負けている。
自分の頬を打った手に口づけを落とすと、そのまま腕を取られ引き寄せられ――唇を奪われる。



