右肩の蝶、飛んだ。


なるほど。

優越感というものは、相手の悔しがる顔を見なければ湧いてこないのかもしれない。

自分では無く、そいつ?
とでも言いたそうな石垣さんの顔が滑稽だった。



「じゃあ、送って頂いてもいいのかな? ありがとうございます」


でも私は、ドヤ顔は絶対に表に出さない。そして、申し訳なさそうに石垣さんを見た。


「ごめんなさい。婚約者さん、ちょっとだけ借りますが、ビジネスの範囲ですから」


こっちには全くその気はないと、低姿勢でそう言えば、きっと彼女のプライドは粉々だろう。



如何せん、私と彼女では生まれてきた環境が違いすぎる。

修羅場なんてきっと経験なんてないんだろうな。



「車、回してくるから」

「彼女、可哀想ね」

「別に。怒鳴り散らして我儘言えば、俺が折れると思ってるだけ。うんざりだよ」

そんな慣れた、経験豊富な男の言葉が蝶矢に似合わなくて苛々した。