右肩の蝶、飛んだ。



「初めまして。わざわざご本人が迎えに来て下さるなんてありがとうございます」

男の人にも直臣さんの甘い笑顔は効果あるのか分からないけれど、忠臣さんはすぐに仕事モードに切り替わり名刺を出した。
私も習って名刺を出したけれど、出来ることなら渡したくなかった。

彼は落ちついた、大人の雰囲気でその名刺を笑顔で受け取った後に、少し切れ長の双眸を見開く。

「『美崎 直臣』さんと、……『美崎 胡蝶』さん?」

「……」

小さく驚くだけで、別に詮索はしてこないけれど、でも私の額に変な汗が浮かぶ。
お願い。それ以上、深く聞いてこないで。

「婚約中なので彼女は一緒の名字を名乗っています」
「――っ」
咄嗟に庇ってくれた直臣さんに胸がじわると熱くなる。

そんな気でもないとしても、私からしてみれば――本当に救われた。

「そうなんですね。すいません、長々と……。お乗り下さい」