右肩の蝶、飛んだ。


「え、あ? 私?」

びっくりした。

蝶矢を視線で探していた時だったので、驚いて声が上擦る。


「ごめんなさい。今から福岡に帰らなくちゃなの」

「あー、明日も仕事ですか? 今からなら終電キツイですよね」

「じゃあ私たちと、プランナーと、結局いつものメンバーかあ」

大袈裟でやたら大きな声だと思ったら、――どうやら蝶矢の婚約者だけは誘わないことで牽制しているらしい。

福岡から来た業者の私にすら誘って――彼女を誘わないのか。


「良いわねえ。こんな古臭い町と違って福岡みたいな都会に住めるなんて」

婚約者も負けじと私を巻き添えにしながら彼女たちを馬鹿にする。

お、お願いだから私を巻き込まないで。

胸元の名前を見ると、石垣と書かれていた。

別府のホテルのお嬢様か。


「私も別府に住んでいましたが、良いところだと思いますよ」

「あらそうなの? 高校どこ? 何処に住んでたの?」


石垣さんの話を聞くと、彼女は私立のお嬢様学校で私と同じ時期に住んでいたのにあまりにかけ離れた裕福で幸せな学生時代を過ごしていたらしく――胸が苦しくなった。

話を逸らすんじゃなかった。