店長と離れたくないから――直臣さんの結婚を断られない?
ありえない、馬鹿にし過ぎなその話に乾いた笑みが浮かぶ。
「じゃあ、どちらにせよ、人を脅してくるような安心感もないあんたには好きなる要素はないのよね」
「でも、一番俺が美崎さんを思ってるよ」
「凄い自信。私はない。後ろめたさも、もう吹っ飛んだし。オーナーさんの事、大嫌いです」
大嫌い、とか些か幼稚な言い方だったかもしれない。
けど、他に良い言葉が浮かばなかった。
「では、良い週末を」
イベントが終わるまであと一時間。
終わって片付けが終わったら――すぐにこんな場所、こんな息も詰まり様な忌まわしい場所から、――消えてやる。
蝶矢の横を通り抜けながら、冷たく睨みあった私たちをきっと誰も姉弟(きょうだい)だったなんて知る由もない。
こんな赤と白のきらめくおめでたい会場に、一番不似合いなのは私たちだ。



