右肩の蝶、飛んだ。


スタッフに慰められている受付嬢は、大人しい清楚そうな人だった。

綺麗で簡単に手折られてしまいそうな人。


昨日の夜、蝶矢に送って貰っていたあの人が――婚約者なのだろうか。


入りずらくてどうしようか悩んでいたら、先に中の人たちが気づいてくれた。


「ご、ごめんなさい、どうぞ、中へ」

「すいません」
頭を下げつつも、個室に入ってからも気になるのは――、その人達の話題。

私に聞かせるように、婚約者の悪口を言っている。



「そもそもあの人って仕事できるの?」

「さあ。言葉と態度は偉そうだけど、女将の後ろ盾なかったら総スカンよね」

「そうよね。誰も話しかけてないし」

とうとう、虎の威を借る狐とまで揶揄されて、その続きはパタンと閉まった扉で聞こえなくなってしまった。

逆にそこまで嫌われて可哀想だと思う。

それとも、あんなに綺麗な人は、擬態も周りの目も気にすることなく生活できるということか。



蝶が舞っていても、自分の方が綺麗だからと気にも止めない様な、――視界にも入らないような人なのかも。



「――居た」

トイレから戻り、仕方なく席に座って時間を潰そうとしていた時だ。

息を切らした蝶矢が私の元へ走ってきた。