「じゃあ、夜の仕込みもあるし、もう帰るね。女将さん、素敵な式場お邪魔させて頂きありがとうございました」
卒なく挨拶を済ますと、さっさと帰ってしまった。
逃げ足が速いと言うか。
去る鳥後を濁さすというか。
「美崎さん」
「美崎さん、貴方のお店のパンフレット、用意しているならば今日の午後の部に参加しちゃってくださいな」
蝶矢の話を遮り、凛子さんが私に退席するよう促す。
パンフレットは元々凛子さんに言われていたのを10部ほど渡していたはずだ。
そのまま模擬式から出て、ギフトや引き出物の見本を展示する会場まで連れて行かれる。
会場は、先ほどの模擬式場より一回り小さなホールだった。エンゲージリングや当日のバルーンアート、ネイル、カメラマン、新婚旅行先用に旅行会社、ありとあらゆる業者がのんびり用意をしていた。
「うちの蝶矢が失礼な事をしなかったでしょうか」
凛子さんの方から愁傷な態度で来られると思わず、警戒してしまう。
この人は、見積書のミスを見つけて上げ足を取る辺り油断できない。



