「お話し中すいません。初めまして。ホテルのオーナーの高山です」
私と店長の――とりとめのない、いつもの答えの出ない会話を遮ったのは蝶矢だった。
蝶矢は、優雅な、余裕のある笑顔で名刺を取り出して店長へ渡した。
店長は一瞬、素の顔を見せたけどすぐににっこりと笑った。
「あら、若いのにこの素敵なホテルのオーナーなのね。初めまして。伊月と申します。ごめんなさいね、オフで今日来たものだから名刺なんてないの。代わりにウチの店のスタンプカードあげちゃうね」
「……ありがとうございます」
店長は、きっとわざと名刺を持って来なかったんだと思う。
理由は分からないけど、用意周到に店のスタンプカードなんて持って来てるあたりが。
カードの裏には店の住所や電話番号、アドレスが載っているのもなんか――いや。
蝶矢に私の隠れ家を見つけられるのは嬉しくない。
「いつも美崎さんにはお世話になっています」
「此方こそ。この子の婚約者が私の古くからの友人なのよ。ご迷惑をおかけしています」
「え、なんで店長、私の保護者ポジションなの」



