右肩の蝶、飛んだ。



「この新作のおにぎりって美味しい?」

「さあ。でも今日、誰か食べていたような気がします。美味しいんじゃないですか?」


「美味しいってよ」

三人にそう伝えると、そそくさと逃げられてしまった。
とくに酔っているだけで害はなかったのに。



「此処で何してるの?」


「俺の台詞です」

イラっとした蝶矢の早口に、私は顔を見上げた。

眼鏡の奥の瞳は、私の変わらない表情を覗きこんでいる。


「私は夜ご飯」

「日田にまで来てそのメニューは酷い。だから俺が一緒にって」

コンビニのおにぎり一個を見て、大袈裟に溜息を吐いていると、脇に止めてあった車の窓が下がる。


「蝶くん、まだあ?」

窓から甘えた舌足らずな声で、蝶矢を蝶くんと呼ぶ。

ウエーブかかった髪が頬に流れ落ちたのを、気だるげに持ちあげる。
綺麗なネイルと、耳に揺れるピアスが女性特有の繊細な色気を引き立たせている。


「すみません。もう歩いて帰れますよね?」

「ええー、何ソレ! 私に歩けって酷くないー?」