「店長はどんな幼少期だったのよ」
『気になるの?』
「別に。どうせ羨ましくなるような、温かい家で育ったんでしょうね!」
『まあ、ね。貴方が欲しかった理想の普通の家庭よ。でも平凡に生きても駄目ね。刺激を一度でも感じちゃったらその刺激が忘れられないの。平凡な中で唯一輝く思い出になっちゃうの。痛みでも眩暈でも悲鳴でも――味わったことの無いモノの輪郭が欲しくなるのよ』
「分かんない。でも、道を踏み外しちゃって温かい平凡な人間が、私の傍まで落ちて来てるんだ」
店長ってどこか手の届かない、私とは違う領域で綺麗に生きてそうに見えた。
ってか、そのイケメンで平凡は無理か。
どうせチヤホヤされて生きてきたと思う。
「落ちてきたけど、そのまま一緒に手を繋いで上がって行ってもいいのよ?」
ふふふと笑うと、そのまま煙草に火を付ける音がした。
でも、喉に引っかかっていたものがいつも、店長と話せば剥がれていく。



