右肩の蝶、飛んだ。




ひらひらと綺麗な蝶が夜空を舞う。

だが私が今、窓から見ているのは、街灯に群がる――蛾。

あいつらは、例え曇りじゃなくて空に星が輝いていても、人工的で手短な光にしか寄りつかない。

月や星まで飛んで行こうとする気持ちが端からないんだから、楽な奴らだ。



「もしもし、店長? 今、何してるー?」

群がって醜い蝶を眺めながら、不意に電話してしまった。

『BARは夜に開店するんだから、忙しいに決まってるでしょ』

「じゃあ、なんで出てくれたの」

『マリッジブルーでその上ホームシックで、その上友達の居ない貴方が不憫だから同情よ。同情』


「身も蓋もない」

『感謝しないなら切るわよ。私、忙しいの』

電話越しにガヤガヤとお酒の席の賑やかな会話が聞こえてくる。

「明日ね、うちの工房のドレス着る子、17歳なんだって」


『あら、そんなに急いでドレス着なくてもいいのに。行き遅れるわよ』