昔、ハサミで羽を傷つけて笑っていた蝶矢は、アレが逃げないようにするための方法だからと悪びれてもいなかった。
純粋に、自分のものにしたいだけの無邪気な子供の恐ろしいところ。
「そんなに俺が怖かったんですか? 自分のしていることの後ろめたさから勝手に俺に怯えちゃって」
「もうすぐ結婚する彼は、『閉じ込めて自分のものなのだから誰にも見せない』って言ってたけど、蝶矢は?」
「……」
もうすぐ結婚する、と遠回しに言おうとして大胆に言ってしまったけれどしょうがない。
「もしかして結婚に迷ってるの?」
「良いから質問に答えて」
嬉しそうに尋ねてきた蝶矢の顔に、石でもぶつけてやりたいのに、光の絨毯の上は石一つ見当たらなかった。
綺麗に整えられて、その上を歩く幸せな道。
私もこんな道なら、自分を蝶に例えて現実に背を向けることも無かったのに。
石ころだらけで道として整備されていない道を目隠しで言われる通り足場を確保しながら歩いてきた。
目隠しを外して、裸足で逃げ出した先は、整備されていない道よりはどこも進みやすい道だった。



