右肩の蝶、飛んだ。


馬鹿げている。
けど、視界はクリアかもしれない。

蝶矢の脅迫も、直臣さんとの結婚も、考えれば考えるほど思考が停止して、逃げ出したくなる。

今、ものすごく視界も頭もクリアで。

きっと何かが噛み合わなくなったり、縛られたくなくなったら――本能的に逃げていくのだろう。


「蝶矢に教えてほしいことがあるの」

ホテルに到着する。今日は、飛び入り参加の前日ということもあり、疑似結婚式が行われる会場には既に大勢のスタッフが動き回っている。


「何ですか?」


一番最初に通された応接間から庭園の奥。
太陽が緑のカーテンを照らし、光の絨毯を作るその上を歩きながら小さな教会へ向かう。


「もし、蝶矢の前にひらひらと蝶が舞い降りて来たら、今の蝶矢ならどうするのかなって」