右肩の蝶、飛んだ。



「美崎さん、お待ちしていましたよ」

「……御出迎えどうもありがとうございます」


日田駅で降りてすぐ、蝶矢の車を見つけて10円傷を一杯刻みたくなった。
そんな白けた私を見て、蝶矢は笑顔だ。


あの時、直臣さんは日田の仕事を自分が行くから、私だけ社長に挨拶行ってくれないか、とか一日で片づけてほしいとか無理難題を押し付けてきたけど。


流石に店長が『仕事にいい加減な貴方って、直臣らしくないわ』と説教をしてくれて、社長への挨拶はお互い仕事を片付けてから、ということで話をつけた。



「こちらが無理を言って、美崎さんと仕事をしたかっただけなので」


「なんだっけな、じぇ? ジェネディック・セクシャル・アトラクションっぽいよ、蝶矢」
「何ですか、その無駄に長い名称」

車に乗り込むと途端に蝶矢も丁寧な喋り方を止めた。

「長い年月会わなかった兄弟に再会したら恋してしまうって現象」