わたしは、6月にこの町に引っ越してきた。

初めはすっごく緊張して、

なんでこんな時期に...

とか、

馴染めなかったらどうしよ... 

とか、いろいろ考えすぎて
ちょっとお腹痛くなったりもしてたんだよね...。

先生に呼ばれて、教室入っても顔も挙げられなくて

かろうじて名前は言ったとは思うんだ。

緊張であんまり覚えてなくて、
いつの間にか自分の席に座ってた。


...少しほっとして、ちょっと周りを見回した。

前から三列目一番端の、海がよく見える席だった。


少しの間ぼーっとしてたら、
前に座っているちょっとキツ目の女の子が

「萩原麗ちゃん、だよね!?
 あたし、菊間頼っていうんだ!
 よろしくね!」

っと少し早口で、高い高い声が聞こえた。。

内心びっくりしていたが、
「んん、よろしくー!」
となんとか表に出さないように努める。

気づいていないようで、
頼は、「次の授業の教科書とかある?」
と、心配そうに聞いてくる。

「あっ。持ってないや....」
すこしまゆを寄せる。

すると、

「んじゃ、隣の席の三浦から借りれば?
 いいよね?」

「あ?ん、まぁいいよ?」


低い、くすぐられるようなこえがきこえた。