ちょうど、横のざら板を通っていた同じクラスの栗生 芯-クリュウ シン- 君が、こちらを怪訝そうに見つめながら、そう問いかけてきた。


私は、涙をグイグイと強く拭き取り、笑顔を作る。


「えへへ〜。目にゴミが入っちゃって!ごめんごめん!」


そう言って、手をフリフリと振る。


けど、栗生くんはなぜか無表情。


「なんか、あったんだろ?」


そして、そんな事を聞いてくる。


図星のあまり、ドンドン笑顔が引きつっていく。


……うぅ〜〜。

やばい、バレるじゃん!!!


そう思い、目を閉じた時。


「ホラ、こんなにも頬が真っ赤だし。涙、キツく拭きすぎ。」


「……へっ」


いつの間に、こんなところまで来ていたんだろう。


栗生くんの声に、反応して目を開けた時には、目の前に栗生が立っていた。


身長が、175センチくらいはある栗生くんを見上げるのは、案外容易ではない。


……首痛くなるし。