……杉崎。


その呼び名に、少し違和感を覚える。


やっぱり、他人行儀だなあ、なんか。


そう思い、下をみた。



「なんか、懐かしいかもしんねー。」


「……え?」


そう言って、目の前で優しく微笑む先輩。

そんな先輩にまたドキッと心臓をときめかす。


……カッコいい。


その一言に尽きる。


「先輩との思い出、話してもいいですか……?」

「……ん?」


そう言って、首を傾げる李雨先輩。


「へへ……っ、やっぱ良いです。」

「は?なんで?」

「なんでも、です。」


なぜか、言えなくなった。

なぜか、伝えてはいけないような気がした。

さっき、気を使わないって決意したばかりなのに。


私は、無理に笑顔を作り、

「戻りましょうか、寒いですし。」

そう述べた。


私は、静かに扉のとって手をかけた。