「…っ」


七瀬さんは、そんな先輩の瞳を何秒か 見つめると、悔しそうにこの場を去っていった。


「心菜…、ごめん。遅くなって、ごめんな。大丈夫か?立てるか?」

そういって、泣き崩れる私に先輩は優しか手を差し出した。


私は、そんな先輩の手にそっと、自分の手を添えると、静かに立った。


先輩が私の瞳を、ジッと見つめている。


長い沈黙が、ずっと続く。


でも、その沈黙を破ったのは、先輩の低くも高くもない、普通の優しい声だった。