「……………」
エリカちゃんは下を向いたまま無言だ。

その場にいる全員が彼女を見つかる。
しばらく沈黙が続く。

「監督!」
その沈黙を破ったのはキャプテン。
「大勢だと近野も話しにくいと思います。なので、俺が話を聞いて報告しますので、それでいいでしょうか?」

キャプテンの言葉に、
「分かった。
森野、よろしく頼むよ」
顧問はそう言って体育館を後にした。

監督を見送ると、
「腹減ったし、移動するか」
キャプテンの提案に、みんなでファミレスに向かうことになった。

各々注文して、ドリンクバーからのドリンクがみんな揃うと、
「とりあえず、優勝おめでとう!乾杯!!」
と、コップを合わせた。
…そんな気分ではなかったけど。

「…近野はさぁ、どうして男子バスケ部のマネージャーになったの?」
一息ついて、キャプテンがエリカちゃんに聞く。

「…えっ、と…」
戸惑う彼女。

そこに、
「…バスケ部のエースに近づくため、って正直に言えば?」
冷たい高橋くんの声が響いた。

「…中学のときもそうだったじゃん。
転校してきて、バスケ部のマネージャーやって、その時のキャプテンだった杉田先輩を、当時の彼女から騙すように盗って…。
杉田先輩が引退したらあっさり別れて、次のキャプテンになった俺に纏わり付いて…。
高校でも、目的は一緒だろう?」