「あ、あ、あの!すみませんっ!僕のせいで・・・」

「ふふっ、大丈夫ですよ。お客様にお怪我がなくてよかったです」



私は笑ってそう答えた。
お客様はじっとわたしを見つめ、固まっていた。
私は一度頭を下げ倒してしまったカップと一緒にカウンターに戻ろうと歩き出す。



「おい」



その途中で呼び止められ、見ると今日も来てくれていた椋平。




「大丈夫か?」




さっきの騒ぎを見ていたらしい椋平が心配そうに尋ねた。
私はにっこり笑って頷く。



「心配してくれてありがとう。大丈夫」



小声でそう答え、私はカウンターに戻った。
本当は、ものすごく痛い。


ズキズキと疼くような痛みに、客席から見えないよう顔をしかめた。




「ちょっと、未侑。大丈夫?」



片づけを追え戻ってきた加奈子が心配そうに覗き込む。
私は顔をしかめながら頷いた。