それなのに・・・。
釣った魚にエサはやらない主義なのか、それから椋平は優しい穏やかな仕事ができる夏目くんから、冷静で落ち着いた甘い言葉なんて囁くなんて都市伝説の仕事ができる椋平へと変貌を遂げる。
それでも、私の椋平への想いは消えることはなく重なる一方。
それは、時々見せるふとした優しさにがっちり心を掴まれているからだろう。
所謂、きっと、私は椋平のしてやったりに、まんまと引っかかってるんじゃないかと思うのだ。
「なにジロジロ見て」
「別にー」
ソファに座って私と椋平が仲良くなったきっかけでもある飯塚六郎の新作を読んでいる椋平を、少し離れたダイニングテーブルの椅子からまじまじと見つめる。
その視線を受け、怪訝そうな椋平は眉を寄せ私を見た。
「そういえばさ、飯塚六郎を勧めてくれた友だちって、誰だったの?私の知ってる人?」
「は?・・・別に、誰でもいいだろ?」
「そりゃ、そうだけど。気になったんだからいいじゃん」
「忘れたよ、そんなん」
椋平はそう言って視線を再び本に戻す。
2人でいる時に、本を読むことないのにね。
もう少し、構ってくれてもいいじゃないか!


