椋平の手が、私を強引に振り向かせる。
私の顔を見て、ハッと目を見開いた椋平。
いつの間にか、私は涙を流していた。
椋平は唇を噛みしめ私の腕を放した。
「・・・頭を冷やしたいならお前はここにいろ。俺が出て行く」
「え・・・?」
「1時間したら戻るから。それまでに落ち着いてろ。顔をあわせたくないなら寝る用意でもしてベッドで寝てろ」
椋平はそう言うと私の横を通り過ぎ、玄関から外に出て行ってしまった。
なんで・・・?
椋平が出て行く必要なんてないじゃん。
私が帰れば済む話なのに。
私が泣いてたから?
椋平は優しい。
口調は冷たい時だってあるけど、本当は優しい人だ。
これも、椋平の優しさからなの?
頭を冷やすなんて・・・無理だよ。
私はその場に座り込んだ。


