私はこんなに好きなのに。
椋平はそうじゃない。
「・・・帰る」
「は?もう電車も終わってるだろ」
「タクシーでも呼ぶ」
「はあ?なんなんだよ、急に」
椋平は機嫌が悪くなると口調もきつくなる。
怒ってるのがわかる。
私は顔を思い切り俯かせた。
怒らせたいわけじゃない。
私だって、せっかくの時間を楽しく過ごしたかったよ。
だって、好きだから。
いくら椋平が冷たくたって、優しくしてくれなくったって。
私は、椋平が好きだから。
「とにかく、今日は帰る。落ち着いたらまた・・・」
「落ち着くってなにが」
「だから!帰るんだって!」
私は強引に立ち上がり玄関まで進む。
ケンカになんてなりたくない。
だから、帰って頭を冷やしたいのに。
どうして引き止めようとなんてするのよ。
私の事なんて、どうでもいいくせに。
「おい」
椋平の手が、私の腕を掴んだ。


