「俺にとって初めては、そこじゃないから」
椋平が、弁解をしようとして声を上げた。
次の瞬間、ハッとしたように口を噤み、口を抑えた。
え?
そこじゃないって・・・。
「どういうこと?」
「やべ・・・。言うつもりなかったのに」
「椋平?どういうこと?」
顔を俯かせた椋平が、深いため息を吐く。
え?なに?
訳が分からず私は首をかしげた。
「・・・それより前に。俺は未侑に会ってんだよ」
「え?」
「俺が、仕事で凹んでた時・・・。たまたまカフェの前を歩いてた俺に、未侑が声かけたんだ」
「私が・・・?」
「ただ、おはようございます、って。それだけだったけど。すごく澄んだ声で、ドロドロと暗闇に落ちてた俺を引きずり上げてくれた気がしたんだ」
気まずそうに話しはじめた椋平。


